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Report

「足部足関節の機能解剖」by壇先生


 「足関節・足部の動きを、機能解剖学的視点から検証する」
 「解剖学的知見の臨床解釈とその応用」
下肢機能に対する機能解剖と運動制御研修会2日目、九州中央リハビリテーション学院の壇順司先生の講義でした。午前中に機能解剖についての講義、午後はそれを踏まえた上で臨床応用を考えた実技をレクチャーして頂きました。最初は、慣れない解剖の画像に理解がしにくい様子が伺えましたが、壇先生の丁寧な説明により納得する様子が徐々に感じられ、最終的には積極的なディスカッションが行われていました。


解剖学的知見を知ることで・・・
 今回、解剖学的知見をビジュアル化して参加者に伝えることは、骨模型に触れ、体表から触察を行うことでその組織の機能を確認していくことでした。機能解剖の基本的な知識を誤って解釈すると、臨床における評価尺度が180°違ったものとなるため、基本的な解剖学的知識はしっかりとおさえていく必要があるとのこと。


足部の安定化を得るためには?
 靭帯などによる受動的な安定化メカニズムと、筋による能動的な安定化メカニズムが相互作用することで足関節の関節安定化メカニズムを形成している。組織の損傷に伴って、単に安定化させるために筋力増強訓練をすれば良いわけではなく、どの程度の損傷があるのか?局所の病態を把握することが臨床での治療において非常に重要であり、それぞれの組織の役割を前もって理解しておかないと、いざ患者を目の前にしてうまく応用できないことがあるのではないかと感じました。
 距骨下関節回内位におけるクロスサポートメカニズムがしっかりと作れているか?偏平足や外反母趾などに非常に密接に関与していくものであり、骨性のロックが生じる距骨下関節回外と、軟部組織が制御する距骨下関節回内位の双方がバランスよく使える事が重要であり、後脛骨筋と長腓骨筋が相互作用してアーチを形成していることはきちんと踏まえておかなければならない。


捻挫の病態を急性期と慢性期で考える
 急性期と慢性期では関節可動域制限に対する考え方を変えていく必要がある。その中でも、捻挫後に足関節の底屈制限はよく観察される。急性期では、底屈そのものが前距腓靭帯にストレスを与えるため、足関節背屈筋群の筋緊張を高めて底屈方向への動きから逃避している。そういった中で、底屈可動域を無理やり出そうとしても逆効果に陥ってしまう事が多い。その結果、多くの慢性期の症例では、急性期で逃避した動きが継続し、1つの運動パターンを形成してしまう。急性を過ぎると、靭帯にストレスをかけられないわけではないので、積極的に距骨の前方すべりを誘発していき、急性期で失った可動域を改善していく必要がある。
このように、病期の違いにより解釈の仕方が異なるため、その病期に見合った対応をしていく必要がある。


最新の解剖学的知見に触れることで感じる!!
 今まで読んできた解剖書や教科書には書いていない内容が盛りだくさんで、理解していたつもりであったことが、実はまったく正反対の機能を有しているものであった。など、思い込みでやってきたことを理論付けていく良い機会になったのではないかと感じます。この研修会をきっかけに様々なことに疑問を抱き、今まで何気なくやってきたことをもう一度見つめなおしていく必要性を感じる研修会でした。




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REPORT

「変形性膝関節症を動作から捕らえる!」by国中先生

 「変形性膝関節症を動作から捉え、局所アプローチから動作アプローチまで」
~遺体解剖所見から臨床推論をたてる~
下肢機能に対する機能解剖と運動制御研修会1日目は九州中央リハビリテーション学院の国中優治先生の講義でした。様々の動作を理論付けていき、実際に参加者とともに体感していく光景は一体感があり、言わんとすべき事を会場全体が共感できているような雰囲気でした。

動作メカニズムをひも解く!!

 なぜ、高齢者の姿勢は同じような特有の姿勢となるのか?
 大きな筋は筋力低下を起こしやすく、上部体幹を支えられない。その加齢による変化が生じた代償として、上部体幹の質量を操作して動作を遂行するようになる。それらの現象は上半身の質量を股関節の関節中心の直上に位置させることで、減弱した筋(大殿筋)でも楽な姿勢となるように無意識のうちに工夫した結果である。
 以前は筋力低下、関節可動域低下に対し、単にそれらの改善を図る直接的アプローチであった。しかし、それでは実際の動作に反映していく事は困難であり、動作を論理的に解釈し、力学的な視点から捉えていく事で、対象者の動作に不足しているものが何なのかがみえてくるものである。動作の本質を捉えていく事は容易なことではなく、まさに理学療法士の専門性であり、ウデの見せどころであると感じました。

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膝OAに対して・・・

 今回のテーマでもあり、国中先生が非常に熱心に取り組まれている遺体解剖所見
 変形性膝関節症患者の姿勢を、遺体解剖所見より、身体組織へどのようなメカニカルストレスが起こって生じたものかを経時的な推論を解説し、それに対して、どのように予防が必要か? どのようなストレスを軽減すれば患者は楽になるのか?など発生の原因から、それに対する対応、予防に至るまで幅広い視野で講義頂き、思考過程が垣間見え、非常に参考になる考え方でした。
 遺体所見から得られた情報と先生の臨床での経験を交え、日頃の患者へのアプローチのコツ(膝関節周囲の触察:大腿骨、脛骨、膝蓋骨、半月板)を紹介頂き、今まで自分がやってきたことにちょっとした工夫のエッセンスを加えるだけで、非常に理に適ったものとなり、感覚を共有できる1つのコマンドとなるように感じました。

立ち上がりを解釈する・・・

 重心移動の力学的要素を身体動作に置き換え、筋出力や骨、アライメント、動作に及ぼす影響について解説され、いつも患者が訴える内容が、実際どういうものなのか、膝がどのようになっているから患者が訴えるのか、実際の臨床場面がイメージとして浮かび上がってきて、今後の参考になりました。
 立ち上がりの際に、膝関節へかかるストレスをいかに軽減する事ができるかが鍵であり、膝に手をついて股関節屈曲練習をしていくことがかなり有用だそうです。手をつくことで上半身質量を一部脛骨に伝搬し、背部や股関節にかかるモーメントを減らすことができるために、筋出力が少なくてすむ。それに加えて、手で脛骨沿いに下方へ圧を加える事で足部機能を意識的に働きかけもCOPの認知もトレーニングされる。立ち上がりに対するアプローチは段階的に行っていくべきであり、もちろん力学的にそれぞれの相の要素を捉えていかないといけません。

国中先生の講義を振り返って・・・

基礎的な運動力学や機能解剖を中心とした講義でした。しかし、基礎的な中にも国中先生のオリジナリティー溢れる内容であり、経験年数の長短に関わらず、みなさんがブラッシュアップできるような内容でした。
基礎的なことを知っているだけで治る患者が1人出てくるかもしれない。しかし、知らない事で症状が悪化する患者が1人出てくるかもしれない。基礎からもう一度見直していく必要性を痛感し、今後の臨床を大切にしていこうと思い直すような研修会でした。



























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