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高濱 照 先生




「肩の基礎と臨床」

九州中央リハビリテーション学院
  高濱 照先生


~腱板機能について(小円筋に着目)~






 腱板機能は教科書に書いてある内・外旋筋という機能だけでなく、ポジションによって働く方向が変化することを把握しておかなければならない。
最近は小円筋の機能に着目しており、内転筋としての作用、2nd外旋時の外旋作用、挙上時の下方からの支え、挙上時の上腕骨の外旋など細かく観察すると様々な機能が存在し、教科書だけの知識を鵜呑みにすることで実は逆の運動が起きていたりすることもあるので注意が必要である。



~上腕骨頭のslipping防止のテーピング~






 最終挙上時にslippingが生じている症例に対し、前方への上腕骨頭の動きに対してテーピングを実施。最終挙上時のslippingが生じる以前のポジションでテーピングを貼っていくことで最終域における肩甲上腕関節の不安定性が減少する。オーバーヘッドスポーツなどに有効であり、アプリヘンションテストでも2nd外旋位で前方への脱臼感が減少するという再現性が得られた。









~テニスにおける身体動作を分析~




 テニスにおいて、150kmを超えるような打球に対して打ち返すという繰り返しの動作においてなぜ選手は故障しないのか?短絡的に考えると、上肢の力だけで打ち返そうとすると負荷が大きすぎて故障してしまう。
 では、どのように打てば故障せずに済むのか?まず手関節は動かないように固定しておかなくてはいけない。さらに回内・外中間位にあり、ラケットが常に立つことで自然としなりが出てくるので無理にしなりを出そうとしたり、力を入れて打ち返そうとすると逆効果となる。上半身の回旋に関しては腰を回して打っているわけではない。軸(重心)がズレないことで素早い回旋が可能となり、腰を回すのでなく準備期に作った上半身の捻りを一気にほどくことで肩や手の負荷が少ない打ち方が可能となる。















~講義を終えて




 普段見る機会の少ない遺体解剖の画像が盛りだくさんでした。さらに動画での説明もあり、どの動きでどの筋が緊張するのか、どのポジションでどういった作用を有しているかなど様々な知見を説明して頂きました。外からは見えない中の構造の機能を検証するために、遺体解剖や筋電図、画像処理など様々な手法を用いて立証を試みており、最初は疑問を抱くことが多いものの最終的には納得するという内容が多くあったように感じます。
 後半は実際のスポーツ(テニス)の場面で、得られた知見を生かしてどうやって動作を分析していくのか、具体的な例がみられたことでより理解を深めることができたように感じます。


山口 光圀 先生


「肩関節機能障害に対してのセラピー」

セラ・ラボ 代表  
山口 光圀先生



~医療人としてあるべきココロを忘れてはならない~


 今や、「山口光國」といえば、医療、スポーツ界、ヘルケアの分野において多岐にわたり書籍、マスメディア等を通して理学療法士の存在を世間一般的にも認知度を高めている有名人である。そんな山口先生でも忘れてはならない大事にしていることがある。それは、医療人としての思想であった。医学の歴史をさかのぼると、やはりヒポクララテスである。 その教えを紹介され、決して忘れてはならない医療人の魂の大事さを冒頭に始まった。

ヒポクラテスの七つの約束
◆利を追求しない
◆医の知識は惜しまず伝える
◆患者に最も適する方法を選択する
◆死を導くような薬は与えない、覚えさせない。
◆流産を導くような薬、道具を与えない
◆人種差別はしない
◆秘密厳守


3年目の理学療法士は、理学療法士業界を代表する!?
 現在、理学療法士の数が増え、いろんなフィールドにおいてもマンパワーとして充足してきた。その数を全体的にみると3年目の理学療法士が占める業界は、その実力が世に理解される。理学療法士のイメージを位置づける3年目の以下の理学療法士達に頑張って欲しいというメッセージも付け加えられた。

~心とカラダを“大切に扱う”~

セラピーについてもご講義頂いた。
 肉体的、精神的、社会的苦痛の解放であり、物体としての体は常に変化しているものであり、同じということはない。
「治る」とは、もとのカラダに戻ることではない。元に戻るということは、科学的にありえない。という歴史人の言葉にある。それでもって、治癒ということばはおさめ癒すということである。刻々と変化する今のココロとカラダを受け入れ、苦からの解放を促すこと
心とカラダを“大切に扱う”を導く(促す)セラピーは愁訴を取り除くだけではない。
自分がいなかったらその人が何もできなくなるような、セラピーは、セラピーではない。山口先生の真に患者のことを思う、患者と向き合う上での方針、信念を感じられた。
「触れた時点でいろんな情報を感じ取る。」
気づかなっかった自分の動きに気づくような、かつ、その人が成長を促すようなことを念頭におくということであった。

命のとうとさ知ること
 命の重さを、リスクを感じている必要がある。関節の治療であったとしても命に関わる疾患に遭遇することは沢山ある。患者さんを目の前にしているときに、その情報を敏感に感じ取っておく必要がある。
側臥位での治療の写真を見せられた。高齢者の治療シーンを通して、骨折や事故を考慮しいつでも逃げることのできる姿勢をこころがける。 効率の悪い姿勢でもリスクをとる。







アドバイス!
結果の出ないことに、悩まない。
仮説が立てられないことに悩んでください。
結果の出ないことで、自分の価値がなくなることを恐れない。
結果の出ないことは、問題ない。
患者のことば、動きを通じて、既成概念にとらわれることなく、それを受け入れて仮説を立てていく



~炎症があって、はじめて痛いと感じる。~

 痛みの治療のポイントは炎症の痛みを取るのではなく、警告の痛みをとることである。つまり、壊れている(関節内や軟部組織)のに、痛くないことが、臨床上多々あるので、
警告の痛みであれば、条件の変化において痛みの出現が変わる。そこに、集中し我が手のひらとて多機能センサーに変化させ情報を敏感にキャッチする。
具体的には、単なる関節運動においても、添える手を一指一指に集中し、触れる場所を決めることで可能となる。

肩の痛みも減少、豆乳の投入!
 一概に肩の痛みとはいえ、関節や筋などの局所的視点ばかりでなく、内科疾患やヘルスケア的な観点で痛みの探索をする必要性がある。更年期障害において、偏食による影響(高酸化物質のとりすぎ)で、通常の治療(注射や薬)が効かない場合がある。その場合には、食事指導として豆乳(イソフラボン)を勧めることで痛みが軽減する場合がある。
いろんな視点から、患者の訴える痛みに対し仮説を立てられる山口先生のプロフェッショナル性を感じた。




~バストの位置でも肩の機能が変化する。~


 某下着メーカーのブラジャー開発においても、アドバイザーとして活躍される山口先生。
肩の機能は姿勢や身体重心の位置によっても、変化する。近年、女性下着の開発により、上半身重心点の位置が正しくない下着着用によって肩の機能障害が生じることもわかってきた。様々な視点と発想が肩の治療を進化させている。
※正しい、ブラジャーの選び方
肘頭と肩峰の2分の一の高さにトップを位置すること!



















~炎症の把握を確実に行うことの重要性~

炎症性の滑膜増生は、山口先生をもってしても、動きは変わらないそうである。
基本構造的問題を把握する。肩甲上腕関節の運動制限は関節内での滑膜が増生しているほど、体表からではこれを取り除くのは困難を要する。この時期に無理に動かすことは炎症や痛みを増強するだけである。

アドバイス!
 終末抵抗感無しでの制限は急性期
 終末抵抗感の強さの痛みの呼応は亜急性期
 終末抵抗感がありながら、気持ちイイは慢性期

~相手の変化はなぜ起きる?~

 行動変容の40%はセラピストとクライアントとのラポール関係によって決まる。
テクニックや方法論によるものではない。
自分の存在が相手を変える!
環境であるあなたは、すでに相互作用が生じている。

クライアントに受け入れてもらうための努力をしているか。
バイアスのかかった受け取り方をしていませんか?
絶対的な関心を持って接していますか?
事実は事実、受け入れること
逃げず、入り込まず、客観的な立場を認識し、確立していますか?
 接点で居続ける。逃げたら追いかける。入り込んできたら逃げる。














「オッケーオッケーうんだいじょうぶだー うんいいぞー」
先生の特徴とも言える、このセリフ。過去に行き詰まったときに、たどり着いたところが、山口先生。あの時の1週間、このセリフを聴き続けて元気が出た気がする。あれから十数年経った今、懐かしい気持ちと共にまた元気をもらった気がした。まだまだ届かない師への尊敬が強まった。                                  

(文責 国中優治)




村木 孝行 先生


「肩関節理学療法に必要なバイオメカニクスとその臨床応用」


東北大学病院 リハビリテーション部
東北大学大学院肢体不自由学 非常勤講師
村木 孝行先生



~肩関節の理学療法~





 肩関節の理学療法を施行していく上で、肩関節に何が起きているかを知っておかなければならない。具体的に病態・病因とバイオメカ二クスの大きく2つをしっかりと理解しておく必要がある。


~インピンジメント~



 一般的にインピンジメントは圧迫・摩擦という言葉で言い換えられる。何をもって肩峰下圧が上昇するかを考えていくと、健常人でも挙上に伴って肩峰下圧の変動は生じている。では、患者では何が起こっているのか?腱板・関節包の腫脹や腱板機能不全、GH肢位や肩甲骨の位置不良など様々な要因で圧変化が大きく生じる。または摩擦力の上昇が生じていることが考えられる。
 インピンジメントを考えていく上で、GH肢位における肩峰下圧の変遷を知っておく必要がある。どの肢位で圧が高まるのか?その圧はどのような動きで軽減するのか?まずは健常な圧の変遷を把握する必要がある。挙上時では90°(GH60°)付近で肩峰下圧が上昇してくるので、圧上昇を軽減させるためのポイントとして、自然な軸回旋の維持・改善していくことが重要。


~肩甲骨運動~





 肩甲骨の運動からも肩峰下インピンジメントを考えると、一般的には肩甲骨の前傾、下方回旋、内旋(内転)が過剰に生じると肩峰下圧が上がるであろうと言われていた。しかし、研究結果では圧の上昇は観察されなかった。時期によっても結果は変わっていくように考えるが、諸説を正しいと決めつけて考えると本当の患者の状態の把握は難しくなるので、1つ1つ自分の目で確かめていく作業が必要である。結果的に関節内インピンジメントが強まる原因は、上腕骨と肩甲骨の協調した動きで同方向に動けているかがポイントとなる。




~腱板修復と可動域制限~





 腱板損傷にて断裂した腱板をOPEにて縫合を実施するが、最終ゴールを健側の肩の可動域に設定することは大きな間違いである。正常、小断裂、広範囲断裂に分けて関節可動域を測定していくが、断裂の程度にもよるが正常の9割ぐらいを目標に可動域を獲得していくのがベストではないかと考える。その中で、しっかりとOPE後の時期を考え、伸張する時期、無理に動かさない時期を明確に分けていく必要がある。


















~講義を終えて~
 今回、村木先生はイギリスで開催された国際肩・肘関節学会のセラピスト部門で大賞をとられ、日本の理学療法研究は世界でも高い評価を受けていることを立証され、英語さえできれば世界でも認められる研究はたくさんあるというお話は、今後の日本の理学療法分野において非常に夢のある講義だと感じました。



高村 隆 先生  


「肩の理学療法(腱板断裂、外傷性肩関節不安定症の術後理学療法、投球障害について)」


船橋整形外科病院
理学診療部 スポーツ医学センター 課長
高村 隆先生



~肩板断裂~





 高村先生が所属する船橋整形外科病院では腱板断裂に対して全症例に関節鏡視下術(ARCR)をおこなう。ARCR術後のプロトコルは術後5~7日で退院され、術後3~4週後で装具を除去の時期だそうだ。腱板断裂は患者にとって痛みとの闘いと先生はいう。その痛みとの闘いに対して患者自身が鎮痛薬を注入できるPCAを実施している。メリットは痛みがあるときに自分で簡単にできるということがある。デメリットは鎮痛薬の副作用が影響することがあるということだが、稀らしい。このPCAをおこなうことで、患者自身も痛みから解放され、セラピストもROMexなどがおこないやすくプログラムの進行がスムーズである。しかし、Drとの相談が必要なので容易に導入できるわけではない。
 入院期間中は徹底した疼痛コントロールに努めなければならない。装具装着時期は肘や手部、手指のエクササイズから積極的におこなう。プログラムとして筋スパズムの除去、ROMex、筋力強化を紹介された。しかし、装具固定期ではセラピストが許可するまではセルフエクササイズをおこなってはならない。その理由を先生は、セルフエクササイズは患者が誤った動きをおこなう可能性があり、腱板やその他の組織にストレスがかかってしまい再断裂などのリスクが伴うからと述べた。
 船橋整形外科病院では「3ヶ月ルール」というものが存在する。それはDr・PT・OTの共通理解のことで、術後3ヶ月は無理なストレスをかけないというものだそうだ。強い負荷運動、切り返し動作、コントロールが難しい動作は避ける必要がある。術後1ヶ月は夜間痛をなくす、術後2ヶ月は下垂位外旋20°を獲得というふうに目標が設定されている。このルールから外れると予後が悪く、術後3ヶ月はリスクを徹底し症例にあわせることが重要であり、Dr・PT・OTの共通理解ができてこそこのルールが成立する。

~外傷性肩関節脱臼~



 opeはバンカート法を採用しており術後翌日には退院される。
プロトコルはメディカルリハビリテーション期、術直後~3週までを疼痛管理、筋スパズム除去をおこなう。3週~3ヶ月はCKCex、3ヶ月~6ヶ月は全身協調運動、腱板抵抗運動をおこなう。6ヶ月以降のアスレティックリハビリテーション期は遠心性、求心性の全身運動を積極的におこなう。
 ラグビー選手では外傷性肩関節脱臼を受傷するとポジションによってプログラムを分けているそうだ。受傷要因のほとんどがタックルであり、競技経験が短い高校生が多い。ラグビーは高校生から始める人が多いので競技レベルやスキルがまだ高くなく、素人同然と先生はいう。その中で受傷を避けるためにはタックルスキルが必要となってくる。船橋整形外科病院ではセラピストがタックルスキルの評価や指導をおこない、再受傷を防ぐことに努めているそうだ。













~投球障害に対するアプローチ~



 投球はスムーズな運動連鎖が重要である。投球障害の要因として肩や肘のオーバーワークか解剖学的破綻があげられる。
肩後方の硬さ、内旋可動域の低下にはスリーパーストレッチをおこなうべきだが、ただおこなうべきではなく局所所見をチェックしながら実施することが重要と述べる。それはスプリングブロックという関節唇への乗り上げ現象が生じることがあるからだ。スプリングブロックが生じている状態で関節を動かすと、周辺部位を損傷してしまうリスクが伴う。関節窩に骨頭がフィットしているかを確認しながら実施すべきと実技を交えながら説明された。
 ここで先生が紹介してくださったのは、下肢体幹のみのアプローチで投球障害もった投手の動作はどうなるかという研究である。もちろん体幹の柔軟性や下肢の筋力が増強することはわかる。しかし、投球に生じていた疼痛の軽減し、違和感なども低下する結果が出たそうだ。
投球フォームは並進運動から回転運動への変化である。





 投球フォームのチェックポイントをいくつか説明してくださった。一つ目は軸足の下半身に体重をのせることができているかである。並進運動を効率よくおこなう大事な準備段階でありオフバランスの利用する必要があるという。投球の流れはエイミング(狙う)→オフバランス→ヒップファーストであり、安定≠動作で、バランスを保つ=動作を引き出すと先生はいわれる。二つ目のチェックポイントは、肘が肩-肩線より下がっていないかである。肘が下がると可動域が低下し、それで投球すると動力がうまく伝わらなく、周辺部位に損傷を与えてしまう可能性がある。しっかりとトップポジションをつくらなければならない。まず機能的な部分をみてあげて、一連の動作を指導、提案をしてあげる必要がある。















 最後にリハを進めるための+αポイントとしてアドバイスをいただいた。まずは選手の特性を知ることが必要であるそうだ。それは精神側面、身体感覚、表現力、人間関係などさまざまだ。活動レベル、技術レベル、選手特性を把握し段階的な移行とオーバーラップ時期を検討することが重要と述べる。また、アスリートの想いと題してアスリートがPTに望むことをビデオレター方式で紹介してくださった。アスリートの想いとして、動作の部分ではなく、一連の動きを把握してもらいたく、実際の活動量やレベルを知ってもらうために現場に足を運んでもらいたいとのことだった。
 このようにアスリートの生の声や全員参加型の講義は研修会参加者にとってとても新鮮なものになった。

宮本 梓 先生




「肩関節機能・評価の再考」

慶友整形外科病院
PT 宮本 梓先生



~棘上筋の解剖~




 一般的に棘上筋の停止は大結節で、作用は肩関節外転・外旋とされている。しかし、最近の研究では、停止は大結節内側および小結節(21.4%)、作用は肩関節内旋と言われており、外旋作用はないとも言われている。また、宮本先生の研究より、棘上筋は0~30°の範囲でFull-canにて最もよく働くという結果が得られた。


~棘上筋の下方回旋作用~


 棘上筋には肩甲骨を下方回旋する作用はあるのだろうか?上肢の質量は人体の8%であり、骨頭中心と付着部のモーメントアームは短い。また、上肢は重く肩甲骨はフリーであることから棘上筋の作用により肩甲骨下方回旋が生じる。さらに、宮本先生の研究より、棘上筋が他筋に比べ早期に収縮するという結果が得られた。この棘上筋の先行収縮により、骨頭の適合性は良好となり、挙上時の回転中心を作ることが可能となる。これらの作用により、棘上筋は骨頭の下方制御として働き、関節窩と上腕骨頭の安定性が増す。




















~肩甲骨の評価について~



 一般的な肩甲骨の評価法として坐位での評価があり、肩甲骨の位置は周囲筋のバランスにより規定されるとされている。しかし、これは本当なのであろうか?
「肩甲骨の位置は坐圧が規定する」という仮説をもとに研究を行ったところ、骨盤帯・体幹に左右差が生じることにより坐圧中心が変化し、肩甲骨の位置も変化するという結果が得られた。このことから、肩甲骨周囲筋のバランスのみでなく、体幹と骨盤帯のバランスが肩甲骨の評価に重要であることが言える。


















~講義を終えて

 今回、先行研究や宮本先生ご本人が実施された研究をもとに、様々な知見を踏まえ講義を行っていただき、教科書に記載されている一般論だけでなく、新たな視点から棘上筋の機能や肩甲骨の評価法について学ぶことができました。
 今まで、棘上筋の作用や肩甲骨の評価について教科書的な知識しか持ち合わせておらず、肩関節疾患患者の治療において基本的なアプローチしか行えていなかったものが、今回の講義で得られた知識により、全く異なった視点から評価を行うことができ、より良い効果が期待できる治療を行っていけるのではないでしょうか。
さらに、宮本先生が臨床現場で実際に行われている、棘上筋への具体的なアプローチ方などを教えていただき、今回参加された先生方にも興味を持てるような内容であったように感じます。





緑川 孝二 先生




「投球肩障害の診かたと治療のアプローチ」

南川整形外科病院 
 整形外科医 緑川 孝二先生


~投球障害肩を診る~


 「投球はどこから始まる?」緑川先生は病院を接した少年達に聞かれるという。
「投げること」が「踏み出すこと」から始まることを認識できていないことが多い。まして、地面からの反力をしっかり受け止めて、それを体幹-上肢と運動連鎖で上行させボールへと伝えていることなど、なかなか理解することは難しいと考える。それを精確に判断し、患者たちの訴えにわかりやすく伝えるための様々な診断方法を講義していただいた。


~原因は肩関節だけ?緑川診断の手順~





 主訴と病歴聴取、②理学的所見と各種テストから始めるが特に重要なのが投球動作の際のタメを生み出す股関節内旋筋群の角度である。障害を予防するためには最低40°は欲しいとのことであり、下肢の重要性は把握はしているが、今後、理学療法を進めていく中で役立つ具体的指標を得ることができた。


~真の肩関節可動域を知る~



様々な視点から障害肩を捉えるために、久恒病院の原先生が提唱されている評価方法に、独自のテストを加えて診断を行われている。以下に主なものを挙げる
・HFT horizontal flexion test 肘が鼻の前に来る 110°
・CAT combined abuduction test 肘がこめかみまで越す 130°
・TFT terminal flexion test
・HERT Horizontal ext, rot, test
加えて、実技を交えてEPTとEETの評価とその改善トレーニングとしてうちわを用いた方法をご教授して頂いた。どのテストも簡便であり、様々な要素を含んでおり、理学療法士としても、各テストを行うだけでなく、得られた結果を様々な視点から分析しなければならないと感じた。



























~講義を終えて

 投球障害肩の大部分が保存療法の対象となり、かつ改善可能であると緑川先生は言われていた。その療法の大部分を担うものとして、よりいっそうの知識および技術の研鑽に努めなければという気持ちにさせられる講義であった。




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